2011年08月24日

食品安全委員会パブリックコメントへの見解

8月 2日に行われた、食品安全委員会リスクコミュニケーションの論点と意見

当日の資料・説明内容は
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.htmlに掲載
「評価書(案)食品中に含まれる放射性物質」
PDFはhttp://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_risk_radio_230729.pdf

1. 概要

●食品安全委員会はリスク「評価」機関であって、厚労省のように暫定規制値を設定するリスク
「管理」機関ではないので、具体的な防護対策は論じていない。
● 累積の実効線量が「100mSv」以上だと健康影響が見出されるが、それ未満の健康影響について 
は、学問的に証明されていない。ただし小児に関しては、チェルノブイリで甲状腺ガンや白血病のリスクが高いことがわかっている。
●食品に含まれる放射性物質の健康影響を検討する上で問題となるのは、当然「内部被曝」だが、
 「内部被曝」に関するデータが極めて少ないため、リスク評価をする上では「外部被曝」を含め
 た疫学データを用いた。

2. 5つの問題点を検証

@「客観的中立公正に科学的知見に基づいて審議」

  ⇒中立的に検証されたかどうか。

 ・専門家として参考人招聘されているのは主に、佐々木康人・祖父江友孝・滝澤行雄・中川恵一・
  寺尾允男である。
 ・ 放射線の専門家は、佐々木康人氏(元放射線医学総合研究所理事長・ICRP主委員会前委員)
 と中川恵一氏(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)であるが、すでによく知られているように放射性物質の
 安全を喧伝してきた人びとである。
 ・ この点に関しては、「中立でないのでは」と会場からの質問もあったが、採用プロセスなどに
 ついては明らかにされなかった。

A「科学的知見の制約から内部被ばくのみの報告で検討するのは困難」

  ⇒内部被曝による有益なデータがないとの理由で、低線量内部被爆による
  健康障害に言及していない。根拠のある事例が多数報告されている。

  
 ・ICRPのモデルに基いているため、内部被ばくを過小評価している。
 (ECRRのクリス・バズビー氏やマーティン・トンデル氏の論文も検討されているが、参考データ「A」に対して「B」と評価)。
 ・ 矢ヶ崎克馬氏などが指摘しているように、ICRPの実効線量は外部被曝モデルであり、またベ
  ータ線の線質係数をガンマ線と同じ1とするなど、内部被曝を過小評価している。
 ・崎山比早子氏監修のリーフレット(8月中WEB公開予定)でも指摘しているが、「低線量内部
  被曝」による健康障害(甲状腺がん以外のがんとその他晩発障害)を無視している。
 ・ 今年中に岩波書店から翻訳が刊行されるニューヨーク科学アカデミーによる最新の報告書『チ
  ェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』では、25年後のチェルノブイリ地域
  における子どもの健康障害の事例が多数報告されている。

B「低線量の放射線曝露による健康影響に関しては、疫学データにおいて統計学的有意
  を示していない」


 ⇒統計的に有意でないから健康影響をないものといていいのか
  様々な研究者の論文や研究成果から重篤な影響についての報告が有る。
  影響について不透明であるからこそ、特に放射線からの影響が強いといわれる、
  妊婦、こどもについては別途厳しい基準が求められるはずではないか。


 ・ 統計学的に有意ではないからといって、健康影響がないとは言えないということは、
  実は疫学の基本である。
 ・ 事実、チェルノブイリ地域の疫学調査・病理学(解剖学)の結果、「子どもの体内に蓄積されるセシウム137が、
   体重1キログラムあ  たり50ベクレルに達すると、生命維持に必須の諸器官(循環器系、神経系、内分泌系、免疫系)、
ならびに、腎臓、肝臓、眼、その他の臓器に病理的変化があらわれることが明らかになって」いる
  (Bandazhevskaya et al., 2004)。
 ・ ヨーロッパにおいても、チェルノブイリ原発事故後、IPPNWは一万人以上の重篤な奇形が発
  生したと報告しており、IAEAでさえも10万から20万件の流産が引き起こされたと結論づけ
  ているが、当然こういった事実も無視されている。

C「生涯の追加の累積線量がおよそ100mSv」
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka_ann_gaiyo.pdf
 ⇒累積線量とした根拠が不明。生涯で平均化にすると今の現状に対して厳しい基準にはなる。
  逆に現在高めの被曝量を許容すると、数年後にはゼロベースの被曝量にしないと成り立たないので
  今後長期に渡る被曝が想定される日本の現状を反映していない。


 ・急性障害のしきい値である「100mSv」とは異なり、あくまで追加の累積線量としているが、
  生涯とする根拠は不明。追加の被曝量が減少していくことを前提としているが、福島の高濃度汚染地域
  原発稼働による新たな事故の可能性といった日本社会の現実を全く反映していない。

D「個別核種に関する検討で、個別に評価結果を示すに足る情報は得られなかった。」
 ⇒具体的な食品安全基準への反映基準としてはお粗末。核種別も吸引被爆にも触れられ
  ていない。


 特に食品からの放射性物質の摂取を考えると、セシウムが問題となるが、動物実験や先ほどの病理
 学データを無視している。結局、食品安全委員会が本来検討すべき核種に応じた食品ごとの汚染・
 その摂取による健康影響に関するリスク評価はなされず、外部被曝を含めた実効線量100mSvとい
 うお粗末なものになった。

3.今後の方向性 

  以上生涯内部被爆・外部被爆合わせて100mSvのリスク評価はずさんな点も
  あるが、日本現状に照らし合わせるとむしろ厳しい基準でもある
   ⇒管理機関である各省庁は採用しない可能性が高いので、この基準を指示し
    厚労省に食品の基準値見直しを強く要請していくことが出来る。


 ・ 単純に「内部被爆・外部被爆合わせて生涯100mSv」とすると、内部被爆年間1mSvとなる。
 (外部被爆:内部被爆を1:4の比率で内部被爆は生涯80mSv、平均寿命80年想定で年間1mSv 
  または、外部被爆そのものですでに1mSvを超える被爆状況がある中で、食品による内部被爆を極力低く設定する必要がある)
 ・リスク「管理」機関である厚労省の暫定規制値に反映されるかどうかは極めて不透明。
  例えばセシウムに関して、現在の年間5mSvに対して食品安全委員会の基準だと1mSvとなる
  が、これは今の現状を考慮すると無理な数値である。この点に関しては、山添康座長も以前コ
   メントで「暫定規制値を今すぐ変えるべきだとは考えていない」と発言。

@ むしろ内部被曝と外部被曝を合わせて「生涯100 mSv」を適用。

A放射線感受性を考慮した子ども基準の設定。

を厚労省に求めていくことが考えられる。

 
 以上隅田聡一郎氏(NPO法人セイピースプロジェクト事務局長・高木学校講師)氏の
  まとめより抜粋


<参考資料>
● ニューヨーク科学アカデミーによる最新の報告書『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment(2009年)http://chernobyl25.blogspot.com/
● 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部がまとめた調査報告『チェルノブイリ事故の人体への影響』Health Effects of Chernobyl 25 years after the reactor catastrophe(2010年)http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/05/ipnnw-health-effects-of-chernoby.html